ゲルマ直結2段増幅NFB付きアンプ実験回路と基板の組み立て
2017年 03月 04日
ゲルマトランジスターの低周波増幅回路でも、NFBを掛けると高品位な低周波増幅回路になるのでは、という素朴なアイデアを確かめたくなった。
まずは、感光マスクを描き、
基板をエッチングした。
組み立てた基板である。
実験には、今はなき小澤電気商会からかつて仕入れた、東芝の2SB364を起用した。
回路図である。
初段を電流帰還バイアス回路として設計した。コレクター電流と各部の電圧を確認した。
低周波発振器とオシロでゲインと周波数帯域を測定した。
電源電圧は-6Vであるが、無歪出力電圧はわずかに0.68V PEPであった。そのときの入力電圧は10mV PEP、ゲインは68倍であった。NFB抵抗の比は100Ω:10KΩなので、A=100となる予定であるが、裸ゲインが不足気味なのであろう。それでも、μA741アンプの帰還抵抗を1.5KΩ:100KΩとした定番AF増幅回路とほぼ同じゲインである。
周波数帯域(-6db)は11.8C/S-83Kcであった。かなりの広帯域である。これはNFBの効果であろう。
回路図に実測した電圧・電流を記入してある。初段のコレクター電流は約0.9mA、2段目は1.5mAである。
電流帰還バイアス回路を採用したためか、初段のゲルマをハンダ鏝であぶって虐めても、コレクター電流は殆ど増加しない。ゲルマが現役だった時代には存在しなかった「3端子レギュレーター」で電源電圧を安定化していることと相俟って、安定度は意外に良さそうである。
PNPを直結2段にすると、2段目のエミッター・コレクター電圧が高く取れなくなってしまう。その結果、出力電圧が0.86Vと低くなってしまった。現在の直結回路ではPNPーNPNの構成としてこの問題を回避している。
が、ゲルマのNPNはあまり売られていなく、手に入りにくかった。小澤電気から運よく入手できたNPNゲルマの2SD76と2SD92の手持ちはあるのだが、最終的には平型の旧型ゲルマで実働品を作ろうと目論んでいるので、PNP2段増幅とせざるを得ない。
ここは直結に拘ることなく、CR結合の2段増幅回路にNFBを掛ける回路の変更する方が無難そうである。
こういう回路である。
このBLOGとツイッターでお世話になっているJR2WZQ OMから、極めて貴重な国産の平型ゲルマを譲っていただけることになった。どこを探してもなかった、極めて貴重な国産ゲルマを譲っていただいたOMには心からの感謝である。
Ebayでアメリカ製の平型ゲルマを含むハズシモノセットを運よく入手できた。また、Transistor Museumというところが、アメリカ製各種メーカーの平型ゲルマを頒布しているとのメールも頂いた。それなりに高価ではあるのだが、アメリカでは古いものがいまだに入手可能であることは、1920年代のナス管が今でも売られていることと共通しているようである。
トランジスター回路のバイアス設計は、2009年ごろに買ったこの本に従って行った。
この本の著者は有名な奥澤清吉氏の息子さんである。1977年に奥澤清吉氏が出版された同名の本を改訂したものであると前書きに記されている。
その奥澤清吉氏が、昭和42年に出版された「新版 トランジスタとその使い方」という本を、2009年頃運良く入手することができた。
使われているトランジスターはゲルマであり、回路設計など詳細に解説されているので、ゲルマで遊ぶためには非常に貴重な資料である。
シリコントランジスターのバイアス設計では、VEBを0.6Vとするが、ゲルマトランジスターではVBEを0.15Vとして設計する。今回の実験基板の実測結果でも、VBEは0.15Vであった。
by FujichromeR100 | 2017-03-04 12:07 | ゲルマトランジスター | Comments(2)
ギターファズに持てはやされた経緯があるようですが、温度特性が悪いために季節により音が変わるだとか、神経質でミュージシャンが苦労したようです。
初歩のラジオの記事で使われるトランジスターが、いつのまにか2SC372になっていましたね。
ハンダ付けのときにラジペンで足を挟んで熱が内部に伝わるのを避ける、なんていう決まりごとがあったことを、今の自作派の人は知らないかもしれません。今回は足を切らずに長いままハンダ付けしました。