UW3DIのファイナル球 - гy-29(829B同等管)
2018年 01月 22日
調整箇所をできるだけ減らす設計のようである。
回路図の左下にファイナル球が描かれている。双ビーム管で、гy-29という番号のタマである。見慣れない番号なので、ソ連独自のタマと思っていたのだが、調べてみると、驚くべきことに、829Bと同等管であることがわかった。
HFトランシーバーのファイナルに、VHF用の829Bをパラで使っているのである。これは意外な設計であった。
Ebayを検索してみると、гy-29が出品されているのをみつけた。非常に手頃な値段だったので、思わず注文してしまった。
ユーリー・クドリャーツェフ氏がこのVHF用の829BをHF用のUW3DIトランシーバーに使った理由は何であろうかと考えてみた。
JAではメーカー製のSSBトランシーバーのファイナルには6146が使われることが多かった。
但し、これは829Bの1ユニット分についてであり、UW3DIのようにパラレルにすると、出力はこの凡そ2倍になる。
Egは6146が-40Vであるのに対して、829Bは-20Vである。これは、829Bでは励振電圧が6146の1/2で済むことを意味している。
また、829BはVHF用というだけありCpgが非常に小さく、更には、スクリーングリッド用パスコンが管球に内蔵されている。
これらのことから、829Bは自己発振の危険性が小さいといえる。
SSB送信機の自作は発振との戦いであることは、今も昔も変わりが無い。UW3DIは、必ずしも電子技術の専門化ではない、ラジオマニアが自作することを前提としたトランシーバーなので、安定動作を優先する設計とする必要があったのであろう。励振電圧が小さくて済むことは、前段の動作も軽くなり、これも安定動作に寄与すると考えられる。
この辺が、ユーリー・クドリャーツェフ氏がUW3DIのファイナルにгy-29を採用した理由ではないかと考えた。
そのように考えると、829Bは往時の自作HFリニアのファイナルにもっと使われても良かった球ではないかと思われる。現在でも、自作HFリニアのファイナルに採用すれば、メリットが大きいであろう。
ということから、フロービスに829B用ソケットとプレートキャップを注文してみた。
なお、807と1625は、シングルでは安定に動作するものの、パラレルにすると寄生発振を起こした。この寄生発振対策には手こずったのだが、スクリーングリッドにFB801を入れると収まることがわかった。
パラにするとこのように寄生発振が起きやすくなる。807/1625はST管であり、管内のリード線も長いことが問題であるが、829BはVHF用なのでリード線も短く、寄生発振は起きにくいかもしれない。が、この辺は実際に組んでみないとわからないところである。
by FujichromeR100 | 2018-01-22 19:07 | UW3DIトランシーバー | Comments(1)
829Bはオーディオでもつかえるようですね。
10年くらい前森博嗣先生のエッセイでもアンプを自作されていたことを記憶しています。(推理小説作家でアマチュア無線がでてくるはなしが数作あります)