F層反射で沖縄と交信できる条件の検討ー正割法則に基づいたF層臨界周波数の計算
2020年 11月 19日
何ヶ月も続いてSSNがゼロだったのだが、10月あたりから黒点が出現するようになっていた。これによりF層が活性化されていることが伺われる。
F層の臨界周波数がどこまで伸びれば秋田と沖縄が27MHzで交信できるものか疑問に思って調べたところ、「正割法則」により計算できることがわかったので、早速計算してみた。
参考にしたサイトである。
http://www.gxk.jp/elec/musen/1ama/H14/html/H1404A22_.html
サイトには次のような例題と解説が記されている。こちらの疑問に対する答えを得るために最適な内容である。
「電離層の臨界周波数が8.4 [MHz]であるとき、送信点から800 [km]離れた地点と交信しようとするときのMUF(最高使用周波数)の値として、最も近いものを下の番号から選べ。ただし、電離層の見掛けの高さを300 [km]とし、地表は平らな面と仮定する。」
臨界周波数(fc)とは垂直方向に地上から送信した電波が電離層を突き抜けずに反射して地上に戻ってくる最高周波数である。
「それでは、解答に移ります。
この問題では、MUFを求めろ、と言っているので、(4)式がそのまま使えて、h=300 [km]、d=800/2=400 [km]、fc=8.4 [MHz]と、各々の値を代入すれば
MUF=8.4×√(160000+90000)/300=14 [MHz]
と求められるので、2が正解と分かります。」
こちらの疑問はF層の臨界周波数fcが何MHzであれば秋田と沖縄が27MHzで交信できるのか、ということである。従って、MUF=27MHz、F層の高度は例題と同じく300kmとした際の臨界周波数を求めることになる。
この計算に必要なパラメーターは秋田と沖縄の直線距離である。これはgoogle mapの距離測定機能で1890kmと求められた。
以上のパラメーターを計算式に代入して計算してみた。
MUF=fc*(SQRT(945^2+300^2))/300
MUF=fc*3.3
fc=27/3.3=8.17MHz
正割法則に従うと、F層の臨界周波数が約8.2MHzの時に27MHzで秋田と沖縄が交信できるという計算結果となった。
この場合、計算に使用するF層の臨界周波数は、電波が反射する、秋田と沖縄の丁度中間の位置のF層の臨界周波数となる。上図に示すとおりに四国沖がその地点に該当するが、電波観測所はそこに存在しない。スポラディックE層とは異なり、F層は上空にほぼ均一に分布していると考えられるので、計算には四国沖中間点に一番近い山川電波観測所で得られたF層臨界周波数のデータを使用しても差し支えないと考えられる。
この計算結果が実際と一致するのかどうか、検証を試みた。アキタYO214局が沖縄局と交信できた11月15日午前(10:00)の山川のイオノグラムで臨界周波数を確認した。
https://wdc.nict.go.jp/ISDJ/index.html
おなじみイオノグラムページの、「イオノグラム」、「カラー」、「任意検索」、「任意インターバル」画面から山川と希望の日時を入力するとこのような画面が表示される。
F層の高度は計算に使用した300kmと一致していたが、臨界周波数は計算で求められた8.2MHzよりやや低い7.51MHzとなり、若干の乖離が認められた。その原因として、イオノグラムから上のようにして求めた臨界周波数が、実際の値と一致していない可能性が考えられる。臨界周波数そのもののデータを知りたいところである。
-・・・-
2年前にCBを始めた際、秋になるとF層反射により交信ができるようになると教えて貰った。
秋田-沖縄間1890kmを通信する際のMUFが27MHzとなるF層臨界周波数は約8MHzであることがわかった。2点間の距離が近くなるほどMUF=27MHzの条件を満たすための臨界周波数は高くなる。
サイクル25が今年の1月に始まったとされており、今後、黒点は増えて行くものと思われる。それに伴いF層の臨界周波数が高くなると、CBにおけるF層反射通信の頻度も増して行くであろうことが計算からも伺われた。
今後、沖縄と交信できた際にF層臨界周波数を確認してデータを蓄積すると興味深い知見となろう。
by FujichromeR100 | 2020-11-19 16:45 | 合法CB | Comments(0)