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Vintage Wireless Co. Ltd., UKの話   

2009年 04月 13日

1985年頃から突然、無線と実験にナス管を売る店の広告が出始めた。秋田市内ではいくら探しても入手できなかったナス管が売られ始めたのには驚いたが、いかにも高価であった。これを入手するために、初めて質屋と古本屋の店頭にたったものである。

 1990年代の初頭に、アメリカの供給先を探ったがなかなか情報が得られなかった。インターネットが存在していなかったのである。どこでみつけたのか忘れたが、イギリスの古典ラジオ部品の専門店「Vintage Wireless Co. Ltd.(Tudor House, Cosham street, Mangotsufield, Bristol)」の存在を知ったのである(この店は、その後廃業してしまった)。

 カタログを取り寄せてみると、見たことも聞いたこともない欧州系の真空管が多数リストされている。古いバリコンやコイルなどの部品も豊富である。その中に「Ballon Shape Battery Triodes」という、いわゆるナス型電池管がリストされていたのである。これには大いに興味をそそられた。しかし、部品全般の値段は決して安くはなかった。ナス型電池管は1本10ポンドであった。「発送前に入念にチェックする。テスト通過の下限は60% Mutural Conductanceである」という解説であった。gm 60%というのは実のところ、他でもない、「エミ減」であろう。このタマを2本と、バリコンなどのパーツ、「Superheterodyne Receiver」という小冊子を発注し、銀行送金(クレジットカードというものを所有していなかった)した代金総額は約JPY30K円、と高額であった。

 その時一緒に、カタログに載っていたOC71も4本注文したのである。これが「少年ラジオ技術者ハンドブック」に記載されていた「OCナンバー」のトランジスターとの初めての邂逅であった。

 品物はナカナカ届かなかった。その理由は、この会社はカタログ掲載部品の多くを他の店から取り寄せて仕入れ、発送していたからである。私が発注したバリコンやバーニアダイヤルはアメリカの店から取り寄せていたのである。航空便のダンボール箱がようやく届いたのは、発注してから2~3ヶ月後と記憶している。初めて見るイギリスのナス管には感動した。届いたバリコンやコイルを使って、早速マナ板式2球再生ラジオを組んでみたのである(届いた2Vナス型電池管の性能は必ずしも高くはなかった。明らかに201Aよりも性能が劣っていた。やはり、実際はエミ減だったのか)。

 Vintage Wireless Co. のカタログでは、部品の名称がイギリス式に記載されていて興味を覚えた。真空管はValve(米国式はTube、以下カッコ内は米国式)、アンテナはAerial(Antenna)、真空管ソケットはValve Holder(Tube socket)、ナス管はBaloon shape Valve(Globe type tube)、等々である。これも良い勉強になったが、見たことも聞いたこともなく、日本国内とあまりかわらない値段の真空管を輸入するメリットはあまりないことに気づき、やはり、アメリカの供給先を探す必要を痛感したのである。納期が異常に長いことも大きな問題であった。問い合わせも航空郵便ではかなりの時間が掛かる。業を煮やして電話を掛けてみたら、ひどいイギリスなまりでさっぱりわからず、あえなく玉砕であった。インターネットのない時代は、苦労が絶えなかったのである。

 その難局を打開したのは、その時一緒に取り寄せた「Superheterodyne Receiver」という小冊子であった。これは、アメリカで好事家が復刻版として出版した本であり、201A時代のスーパーヘテロダインラジオの解説書である。この著者に手紙を出したところ、運良く親切な人で「Antique Radio Classified」誌の存在を教えてくれたのである。This contains all information you needとかなんとか書いてあったように思う。これにより、ようやくアメリカの部品供給元の情報が得られたのである。また、同時にAntique Wireless Association (AWA)にも入会することができたのである。AWAの話は、また別項に記載することにするが、親切な著者のおかげで、ようやくアメリカのラジオ部品やナス管を入手することができるようになった。

それにより明らかになったアメリカでのナス管の値段の安さには腰を抜かして驚き、義憤(!?)さえ感じたものである。1990年代初頭、国内で1本27,000円から35,000円、ヒドイところでは45,000円もしていたRCA250が1本US$60程度であったのだ(今は$200以上、天井知らず)。同じような国内価格であったWE205D丸玉も向こうの担当者が「高くなった」といいながらUS$90位で手に入ったものである(今では$450以上、天井しらず)。それが1990年初頭であったから、1985年当時の値段はもっと安かったのであろう。

 これらのオーディオ球は別として、RCA224などの「ラジオ球」は現在、販売店での在庫は激減し、当時と比較すると高くはなったものの、まだ手の届く品であるのはありがたい。値段がそれ程高騰しないで済んでいるのは、オーディオに使えないからであろう。

 話が飛んだが、自分で初めて真空管と部品を個人輸入した会社として、「Vintage Wireless Co. Ltd.」は忘れられない会社である。廃業してしまったのは、残念である。但し、OC44、OC45、OC72を入手するまでには、さらに19年の時間を要したのである。

by fujichromeR100 | 2009-04-13 12:11 | 海外通販 | Comments(0)

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