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OCナンバートランジスターを使った6石スーパー   

2009年 04月 16日

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イギリスの部品屋から届いたOCナンバーのトランジスターである。左から、OC44、OC45、OC71、OC72である。

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OC44は、オリジナルの化粧箱に入ってきた。感動モノである。

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「少年ラジオ技術者ハンドブック」には、ナショナル製のOCナンバートランジスターの写真が掲載されている。まさに、感無量である。

1950年代前半に開発された、これらのトランジスターを現代に活用し、「6石スーパ-ラジオ」の能動素子として実際に作動せしめることは、極めて意義深い試みのように思われる。それは、1920年代に使われていたナス管を使用して送信機を組み立て、21世紀の現代にハムとの交信に実際に使用するという、酔狂な試みと軌を一にする、オトコのロマンなのである。

というわけで、実際に「OCナンバー6石スーパー」の組み立てに着手したが、その前に運良くOCナンバートランジスターを使用した「ナショナル6 石トランジスタ・ポータブルラジオ」(ナショナル・カラー・ブレテン45,『無線と実験』1958 年7 月号)の回路図を見つけたのである。

fomalhaut.web.infoseek.co.jp/radio/radio-circuit/portable/TR-radio/national/national-TR-6.pdf

「絵で見るラジオのABC」の回路とは違い、ナショナル得意の2段直列型AGC回路を使用している、ちょっと見慣れない回路ではある。これをコピーするのもテかとは思ったが、IF段トランジスターの電流設定に問題がありそうなので、やめた。各段が電流帰還バイアス回路となっている「絵で見るラジオのABC」の回路の方が調整しやすいと考えたのである。但し、ナショナルの回路に従って、電源電圧は6Vに変更し、OC71のベース-アース間の抵抗を5KΩから10KΩに、OC44のエミッター抵抗を3KΩから1.5KΩに、ファイナル近くの電源デカップリング抵抗を200Ωから100Ωにと変更した。バイアス抵抗値はプロトタイプで実施した方法により決定する。100KのVRで適切なコレクター電流となる抵抗値を求めて固定抵抗に置き換えるのである。

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(OC44、45、71、72が立ち並ぶ基板。ゲルマダイオードには秘蔵のナショナル黒塗りのOA70を起用した。OC72は金属カン付きの後期型である。)

プリント基板はプロトタイプ用と全く同じであり、既に作ってあった。部品をハンダ付けする作業は1時間程度で完了した。OC72終段B級プッシュプルステージは無信号時2石で3mA、OC71は1mA、OC45の2段目は1mA、AGCの掛かるOC45の1段目は0.5mA、周波数変換のOC44は0.5mAにコレクター電流を調整して、火入れである。バリコンのダイヤルを回すと、NHK第2が聞こえた。ABSも弱いながら聞こえた。まずは一安心してIFTの調整をしたところ、IF段が発振状態になったのである。もちろん、これは想定内である。まずは、ナショナルの回路に示された値の中和コンデンサーを接続した。すると、想定外のことに、発振が完璧に収まったのである。驚きながらも喜びつつ、トラッキング調整を実施し、めでたく完成と相成った。

各局を受信してみてさらに驚いた。BSNが実用的に聞こえるばかりではなく、感度とゲインは「ゲルマトランジスター6石スーパー、プロトタイプ版」を明らかに上回るのである。おまけに、音質が非常に良い。Hi-Fiではないが、柔らかく聞きやすいのである。たまたま、終段のOC72のバランスが良いのだろうか。比較すると、「ゲルマトランジスター6石スーパー、プロトタイプ版」はうるさく感じる傾向がある。終段の2SB156のバランスが悪く、歪みが生じているのかもしれない。一方、気になった点は、同調時にかなり目立つホワイトノイズが出ることである。これは真空管スーパーラジオではみられない現象である。「トランジスターラジオはノイズが多い」という昔の風評を実体験することとなったのである。

とはいえ、予想を上回る性能である。50年以上前に開発された、「黎明期」のトランジスターを使ったラジオが、まさかここまで聞こえるとは思わなかったのである。OCナンバートランジスターが目立つように、極めてシンプルな造りに組み上げた。Black Bulletsを眺めながら聞くBSNは、またオツなものである。

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 プロトタイプ版では散々苦労したが、本番は予想以上に順調にコトが運び、拍子抜けする程であった。「OCナンバーのトランジスターを入手して、6石スーパーを作製する」という、酔狂な試みが成功裏に完了したのである。

 回路に組んだ際のOCナンバートランジスターの電力利得は、2SA12、53に比べると相当小さいのであろう。ゲインがMAX近くになるコレクター電流で動作させても、IF2段増幅ステージが発振しないのである。この時期のトランジスターでは、IF増幅が2段必要なことにうなずける。が、「新型」ゲルマトランジスターである2SA12、53でも果たしてIF増幅は2段必要なのか・・?発振を止めるために相当ゲインを殺さないといけなかったことを考えると、IF1段増幅でもかなり感度の高いラジオになるのではないか。実際、あるHPで、シリコントランジスターではあるが、IF1段の4石スーパーの作製について解説されている。その著者の居住地は大阪方面の放送局からかなり遠いらしいが、ちゃんと聞こえるとコメントされている。2SA12、53など「新型」のゲルマトランジスターでもIFは1段で十分なのではないか。その方が発振もせず、調整しやすいのではないのか・・・・???
というギモンが沸くわけであるが、これは今後の検討課題である

一方、次なる課題は、シリコントランジスターで6石スーパーを作製することである。実は、シリコントランジスターの足の配列に合わせてパターンに変更を加えたプリント基板を、既に作製してあったのである。トランジスターにはコレクター電流により順伝達アドミッタンスが大きく変化する特性を持つ(AGCが良く効く)、現代のIF/RF用トランジスターである「2SC2669」を起用するのが「常識」であろう。しかし、凝り性が祟って、非常識なことに、旧タイプのトランジスターを使ってみたい、と思い立ってしまったのである。電気的なメリットは、何もない。ただ、「1970年代に使われていた古いシリコントランジスターを使ってみたい」という興味だけなのである。

シルクハットタイプの旧タイプ2SC372と2SC735、四角いパッケージの2SC454を探し回って、老舗の部品屋から、無事に入手し得たのである。古いモノ探しがやめられない、困った習性なのである。みつかると、ヒジョーにうれしいのである。基板の組み立ては、まだ実施していない。週末の課題である。早く作ってみたいのである。

シリコントランジスターは、ゲルマトランジスターと一体どのように違うのか!?

興味がつきることはないのである。

by FujichromeR100 | 2009-04-16 08:19 | ゲルマトランジスター | Comments(0)

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