UY807パラレルリニア-完成
2011年 04月 25日
シャーシー裏の配線はあっさりしている(ジャンクシャーシーなので穴だらけである)。
電源を接続して17JZ8の安定化電源の出力電圧を測定すると、VRの位置によりきちんと出力電圧が変わる。安定化電源として動作しているようである。807のバイアス電圧もVRにより正常に調整可能である。送受切り替えリレーも巧く動作する。どうやら電源、配線に問題はなさそうである。そこで、局のセットアップをしてみた。
通電状態で上から見たところである。
(17JZ8安定化電源回路の基準電圧としたネオン管が点灯している。)
(807 2本のヒーターが点灯している)
プレート電流が2管で55mAになるようにバイアスをセットした。バイアスを浅くしていくと、プレート電流が増加して200mAを越える。
電力計を接続していよいよ送信テストをしてみた。「あ”~」と声を入れるとプレート電流が増加する。プレートバリコンとロードバリコンを最大出力となるように調整すると、30W弱の出力が得られた。プレート電圧は400Vである(声を入れると430Vから400Vになる。B電源のレギュレーションは完璧ではない。スクリーングリッド電圧は声を入れてもほぼ300V一定である)。声をMaxに出すと、グリッド電流計が0.1mA弱振れる。励振レベルは最適のようである。
(アイドリング電流、55mA)
(「あ”~」と声を入れたところ。プレート電流計が120mA程度を指示している)
なお、バイアスを浅くすると807によっては発振してしまう個体があり、発振せず、且つ、30W程度の出力が得られる個体を選別する必要があった。gmチェッカーでは規格をクリアーしていても中古管は個体毎に状態が異なり、エミ減気味のタマも混じっていることがわかったのである。
回路図は次のとおりである。送受切り替え回路は記載していない。807を使ったリニアアンプそのものの回路図などどこにもなかったので、絶版「リニアアンプスタイルブック」に掲載されていた6146A3パラ、6JS6Cパラリニアの回路をみながら組み立てた。17JZ8安定化電源回路は、6146A3パラリニアの回路に記載されていた6BM8安定化回路のコピーである。組み立てた後でこの回路図を書く始末であるが、回路自体はそれ程シンプルである。
807のグリッド側入力回路は非同調である。エキサイターからの50Ω5W出力を巻き線比1:2のトロイダルトランス(インピーダンス比1:4)でステップアップし、200Ωの抵抗に電力を喰わせてその両端に発生する電圧で807を励振する設計である。入力側のインピーダンスが低く、且つ、同調回路が入っていないので中和を取らなくても発振しないことが特徴である。
土曜の15:00過ぎ、調整が終わったのでいよいよ実際に交信してみた。エキサイター(今まで使っていた5W出力送信機)の切り替えスイッチを受信から送信にするとリニアのリレーが切り替わり、リニアに付けたパイロットランプの受信「緑」が消灯し、送信「赤」が点灯すると同時に、プレート電流計が55mAを指示する。マイクに話すと、プレート電流計がピクピク振れる。先週交信したJH2の局を呼んでみると、信号が強力になったというレポートである。JF8の局を呼び、リニアを介したときと、5Wのままとを切り替えて信号強度を比べて貰う。やはり、リニアを入れると信号の力感が全く違うとのことである。
日曜、若干の調整をした後、さらに実働試験を重ねた。日曜はノイズが非常に多く、これまでの経験では5Wでは殆ど交信できない条件であった。Sメーターがノイズで9程度振れているのである。そのノイズレベルを上回る、強力な信号の局しか聞こえない最悪の条件である。丹念にワッチして、CQを出している局や交信が終了した局、「行政区」を移動サービスしている局、特別記念局など、聞こえる局を片っ端から呼んでみたところ、全ての局と交信できた。さすがに、コンディションの悪いときに、5Wと30Wの違いは顕著である。
2ケタコールのOM 2名、そしてJR1コールの昔日を知るOMと運良く交信できた。「自作送信機、5Wのエキサイターに「UY807」パラレルリニア、受信機も自作でFET高一中二にクリコン」と紹介すると、一様に驚かれた。「UY807」は往時を知るOMの琴線を激しく揺さぶるようである。
5Wでも相当楽しめたが、7Mcで安定して交信を楽しむためにはある程度の出力が必要であることも事実である。7Mcはそれほどコンディションに左右されずに安定して一年中国内交信が楽しめるバンドである。無線を始めた当初から、7Mcは好きなバンドであった。
懸案であった807リニアが漸く完成した。実用性は抜群である。807をAB1級で動作させるのは初めてである。トランジスターのワイドバンドアンプをファイナルに使う5W出力の送信機を「エキサイター」にして、リニアにより所望の出力に増力する、という構成を具現化できた。今後14Mcのリニアも検討したい。当初、IRF510を使うリニアを検討する腹づもりであったが、真空管式が先に完成してしまった。実際に使ってみると、ヒーターが赤く灯るタマの機械は、やはり良い。その魅力は、まさにSLの魅力と軌を一にするものであろう。
なお、リニアを自作するのは初めてであり、完成するかどうかはやってみないと判らない状況であった。予想外に順調に完成したので、直ちに「第14送信機」(使っていた7Mc自作SSB送信機)の部分変更と、空中線電力の変更申請書を提出した。空中線電力が10Wを越える局の変更申請は色々と煩雑であるというのが昔のイメージであった。が、実際はTSSでの保証認定を受けるだけであり、申請書類はあっけなく完成した。とはいえ、既存の自作送信機をエキサイターにして、自作ブースターを付加する変更なので、エキサイターとブースター全ての構成を示す「送信機系統図」を添付しないといけないことはいうまでもない。保証認定料は比較的手頃な3K円であった。
by fujichromer100 | 2011-04-25 09:53 | 7Mc SSB TXMR | Comments(2)
年々、電池管やジャンク・クリスタルの放出品が少なくなってきている様に思います。
私のリニアは最初、発振してしまい、グリッドに1KΩの抵抗を入れてなんとか普通に動作するように漕ぎつけましたが、本来的には807にはハカマをはかせてシールドしないといけなかったのかもしれません。何しろ、写真のとおり、807にはシールドも何もしないで組んだのが、発振した原因と、今になって考えています。6146はベースがシールドになっていますので、そのような手当ては必要ないのでしょう。807のベース部分シャーシーに沈めるのも良いかもしれません。
入手された807でFBなキカイが出来ますよう。